コート

コート

オシャレさんだった友達が、チェスターコートを仕立てるからと、それに付いて行ったことがありました。

もう何年前でしょうか、25年前になるかしら。

スキャバルのモヘアは素敵な生地で、軽く扱いやすい。

濃紺のそれで仕立てることに決めました。

その仕立て屋さんの職人さんは、「生まれた時から縫い子」と私たちが呼んでいたほどの熟練者で、口で説明すると、「ああ。。。わかりました。」と、イメージ通りに仕上がってくる。

エディ・マーフィーが「大逆転」の劇中で着ていたチェスターコートを、友人はイメージしていたので、そのように伝えて仕上がりを待ったのです。

同時に作ったスーツは、これも同じくエディ・マーフィーが「48時間」で着ていたグレーのスーツをイメージ。

仕上がってきたそれは、飾りステッチも手縫い、想像をはるかに超える後ろ姿の美しさに、驚嘆のため息が出ました。

スーツだけでもステキ、コートを着てもまたステキ。

中身はただの幼なじみですので、「惚れてまうやろ!」ってなことにはなりませんが、「馬子にも衣装とはこのことだ」と感心しきりでした。

その友人が南方に仕事の関係で行くことになり、「10年ほど帰らんやろう。形見分けでもしとくわ。」と、そのスキャバルのチェスターコートを、私にくれました。

165センチのフェザー級ボクサー体型でしたので、10センチほど低い私でも、それなりに綺麗に着れます。

「ありがとう、大事に着るよ。」と見送りました。

その友人が、12年ぶりに日本へ帰ってきました。

変わらずおバカさんで、12年のブランクをお互い感じさせない再会だったのですが、少々お育ち遊ばされた様子。

「アンタ太ったね。」というと、「アンタも太っとるやないか!」と反論される。

ええまぁ、たしかに私も育ちましたがね。。。アンタよりはマシやろ。。。

「あのコート、まだ着てるんか?」と訊くので、「いや、実はもうね着れん。」とカミングアウト。

「前のボタンを閉めるとね、ラインが崩れるのさ。。。」

「そうや。やっぱ太っとるやないか!」と、大笑いするのが悔しくて、「アンタも着てみろ!」と差し出しました。

「キレイに保管してくれてたんやな、ありがとう。」と言いながら友人は袖を通し、「あれ?」と。

腕を片一方入れると、もう片方に届かない。

無理やり入れると、なんだか怪獣のタッコングみたいです。

「あんた、そりゃ、吊っとるわ。タッコングやんか!」

12年というのは代謝も落ちるしな、いろいろ変わるわな。。。しかしまぁ、この変わり様って!とゲタゲタ笑い転げました。

諦めてハンガーにかけたコートは、また美しいラインでそこに存在し「職人芸っていうんはさ、素晴らしいもんやね。25年経ってても、まだお見事やもんな。」と感慨深く涙が出るような気持ちになりました。

今買っている洋服は、きっと再来年には痛んで、捨ててしまうでしょう。

次に買う洋服もそうでしょう。

後々に残したいような洋服を、今はもう買いません。

ちょっとさみしい気がします。

脱毛 銀座

palabras del alma

今から10何年かほど前、倉敷に滞在していたところ、コンビニで「海外からの労働者」と見受ける5?6人のグループが、店員さんに向かって、一生懸命何かを伝えようとしていました。

聞き耳を立てていると、英語ではありますがどうもスペイン語訛り、それも南米のペルーあたりのね、そのように聞こえました。

ワタクシ、英語がヒドい勢いでブロークンです。

書けません、しゃべれません、イミワカリマセン、ちゃんと三拍子揃ってます。

それがどうしたモンか、なにが違うのか、ぜんっぜんわからないのですが、スペイン語だけは書けるしゃべれるイミワカルでして、「あんた、スペイン語か?」とそのグループに訊きました。

人見知りですから、大体はそんな大胆なことしないんですよ。

でも、よっぽど嬉しかったんです。

日本でスペイン語を披露する場なんか、そうそうないんです。

第二外国語がスペイン語だっただけで、そんなに勉強した覚えもありませんし、向いてたんでしょうね。

それに比べて英語は幾ら勉強しても、頭に入らない。

それで落第か!と、常に弱点でした。

でまぁ、話しかけたのですが、「トランスが欲しい」と言っているのですよ。

プラグもね!と。

いやいやいやいや、あんたね、コンビニに。。。しかもこんな真夜中に、アンタの国じゃコンビニにそんなモン売っとるんかとね、そりゃ言いますわ。

「少なくとの僕が住んでいる家の近くには、こういう店自体無い」と相手は答え、「どうしてもドライヤーが使いたいのだ」というのです。

そういう店すらないところから来た子が、どうしてドライヤーを持ってるのか、そっちが不思議だよ!

異様にがっかりしているので訊くと、どうも彼女が本国から来るのだと。

そのコンビニの近くの製紙工場で働いているのだけれど、日本人の友だちはまだ出来ていない。

彼女が僕を心配して、同じような派遣の仕事でこっちに来ると。

迎えに行くつもりだが、そうしてもオシャレをしたいとね、そういうことみたい。

なんだか可愛くなって、「私のあげるよ」と、車に積んでいたドライヤーを、彼にあげました。

彼は涙を流さんばかりに喜んで、そのグループの友達たちもそれはそれは嬉しそうに握手を求めてくるのです。

とんでもなく素晴らしいことをしたようになって、かえって恥ずかしい。

「なにかお礼がしたい。」と彼らは言いましたが、そんなね、わざわざ働きに来てる子に「なにかお礼を」と言われても、貰えるはずないよ。

すると「これを貰ってくれ」とバッグから差し出したのが、一枚のCDでした。

ありがとうと受け取り、手を振るその子たちを後にコンビニを出ました。

車に乗って、そのCDを聴こうとカーステにいれる。

流れてきたのは「palabras del alma」

マークアンソニーのデビューアルバム「otra nota」だったんですね、、そのCDは。

故郷から持ってきて、ずっと聴いていたのかと思うと、ちょっとグッと来る気持ちになりましたっけ。

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